×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
しんらさんのpostではすはすした 四十代さんと老いパラ様
死ネタ+オリキャラねこちゃん+パラレル の三重構造
大丈夫な方は下のタイトルより
死ネタ+オリキャラねこちゃん+パラレル の三重構造
大丈夫な方は下のタイトルより
ドアの開く音に、耳を澄ませる。
二度と戻らないと、理解していても。
入ってきたのは、一匹の茶色い猫だった。
毛もぼさぼさで整えられていない。
それでも、汚いという風もなく、どちらかといえば精悍や粗野なイメージを想起させる。
いわゆる「わいるど系」というやつだろうか。
猫に野性味の如何を考えるのもどうかとおもうが、そういうことにしておいてほしい。
「キミかね、ジェイデン。」
入ってきた猫に声をかける。
元は野良の猫だ、本当の名前はなんというか知らない。
『ジェイデン』というのは、以前ここに出入りしていた男が、この子に勝手につけた名前だった。
ジェイデンは、にゃーとひと鳴きし、老人の足元へと駆け寄る。
杖もつかずしっかりとした足に、体重を乗せるようにして体をこすり付ける。
パラドックスは、その固まりかけた体をゆっくりと折って、寄ってきた猫を撫でる。
皺の刻まれた細い指は、この年になっても美しく。
零れる髪の毛は、あの頃よりは褪せているがそれでも美しくキラキラと零れた。
「またご飯をせしめに来たのかね、全く…キミは名付け親にそっくりなのだよ。」
慈しみの目で見つめながら、ぽつぽつと溢す。
テーブルの上には、パラドックス用の晩御飯。
野菜や漬物類がおおく、咀嚼力の落ちたあごのために柔らかく煮付けられた魚が湯気を上げていた。
その向かい側、テーブルの向こう側。
まず自分では食べないであろう、たくさんのエビフライ。
タルタルソースとオーロラソースが隣に置かれ、大量のキャベツの千切り。
明らかに彼が食するには似つかわしくないメニュー。
それが誰のものなのか、ジェイデンは知っていた。
にゃー、と寂しそうになく動物を、優しく微笑んで抱き上げる。
「知っているのだよ。もう十代が帰ってこないことなど。」
ぽつりと呟いた言葉は、寂しさと切なさを含んでいた。
テーブルの向こう側に用意されたそのメニューは、十代のためのレシピだった。
フリーのカメラマンとして、世界中を股にかけ。
時には風景撮影として、時にはモデルのカメラマンとして。
そして時には戦争特派員として。
彼はいつでも世界中を飛び回っては、時折ふらりと戻っていてご飯をせしめる。
いつ帰ってくるか分からない彼のために、パラドックスは毎日毎日。
食べてくれるか分からない食事を、毎日毎日用意して。
帰ってこない日をひそかに憂い、帰ってきた日をひそかに喜び。
自分の向かい側で美味しそうに白飯と頬張る姿を見るのが、老いぼれの唯一の楽しみだ、なんて茶化してみたりして。
でもそれが、意外と冗談でもなくて。
こんな老いぼれの魅力もない体を、帰ってきてすぐに抱きしめて。
うれしそうに「ただいま」という声が愛おしくて。
皺の多く刻まれた頬や手を優しく撫でる、自分よりいくらも滑らかな肌。
ご飯をたくさん食べて、にっこりと笑うその笑顔がたまらなくて。
ずっと一緒にいられなくても、時々あって触れ合うだけでも。
それだけでも幸せだと思っていたのに。
いまでは、それすらも叶わない。
―――――――数ヶ月前。
差出人不明のエアメールが、ポストの中に入っていた。
中身は英語で書かれており、その内容はパラドックスを戦慄させるに十分な内容だった。
『某国の内紛にて、戦争特派員であった遊城十代は巻き込まれその命を落とした。
後日、彼の私物をそちらへ送るので受け取りを依頼する。』
簡潔で明瞭、だからこそ鮮烈。
初めは、語学力が落ちてしまったのかとわが頭を疑った。
だが、読めば読むほど、それは現実味を帯びて脳に浸透する。
彼が、死んだこと。
もう、戻っては来ないこと。
不思議と、狼狽えることも、涙することもなかった。
ただただ、ポッカリと。
心のどこかに大きな穴があいてしまったのをつよく感じていた。
十代とはここの所殆ど会うこともなかったし、思い出が心の邪魔をすることもあまりない。
だが、色がない。
白と黒の世界が淡々と流れる、生き甲斐にかける日々。
視覚的問題ではなく、心の問題。
世界はこんなにも彩り美しいのに、心の中からは色がすべて抜け落ちて。
気がつけば毎日。
けっして誰も食べることのない食事をひとつ、多めに作っている。
綺麗に並べてから、その皿に手をつけるものが二度と帰ってこないことを思い出す。
そろそろ高血圧とか高脂血症とか、怖いから油物は控えろといっても馬耳東風。
「大丈夫だって」とわらいながら、エビフライを頬張っていた十代の姿。
自分の作った料理を美味しそうに食べる姿は、もう一生見ることはできない。
そうして理解するたびに、毎日死を知らされた時の面持ちを思い出して一日を終える。
そして、性懲りもなく。
毎日、けっして誰も食べることのない食事をひとつ、多めに作っている。
ジェイデンがにゃあ、と腕の中でもぞついた。
「ああ、すまない。キミも腹をすかせてきていたのだったね。」
現実に引き戻されて、パラドックスはゆっくりと体を動かす。
彼のためだけに用意したキャットフードを、皿に移してやる。
テーブルの足元に皿を下ろし、同時にするりとジェイデンもパラドックスの腕の中をすり抜けて
となりにちょこんと座って待った。
十代とそっくりだ、と一人ごちる。
彼も席に着くのはやたらと早かったが、先に手をつけることはなかった。
きっかり自分が席に着くのを待って、それから元気に「いただきます!」と笑っていた。
ぱたぱたとしっぽで床を叩きながら、早く食べようと催促する。
パラドックスは隣にフードの袋を置き、ゆっくりと席に着いた。
向かい側に誰もいない食卓。
これからずっと、その席を埋めるもののない食卓。
だが自分はこれからも、いない十代のために、食されることのないメニューを用意するのだろう。
「いただきます。」
拍手をうって、いただきます、と一人呟く。
声を合図に、かりかり、とさらとキャットフードがこすれあう音が聞こえてくる。
不規則な、誰かの食事の音を聞きながら。
パラドックスはゆっくりと拍手を解いた。
***********
かってにねこちゃんだしちゃった。
しかもジェイデンにしちゃった。
オリキャラ苦手なひとサーセン。
一日中考えてたら、なんだかかなしくなった。
楽しんでいただければ幸いです。
PR
この記事にコメントする