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コナプラ
死の概念のない機械に果たして死はあるか。
題は、思いつかなかったのでそのまま。


ちょっとシリアス目に。
つか忙しかったんじゃねえのか、私。

よろしければ下のタイトルより。






糸の切れたマリオットは、さながら人の死だった。





初めは、それが何なのか理解できなかった。
バラバラに投げ出された肢体。呼吸も胎動も感じられない雰囲気。
遠目に見ても、ソレは人間の形をし、人間と同じ材質をしているというのに。
落ちた体は人間のそれとは思えない程無機質で、まるで人形の様だなとプラシドは感じた。
ゆっくりと近寄る、人の様なものはややもはっきりとその存在を視界に納めてゆく。

倒れているのソレが身に纏うのは、真っ赤なベストと真っ赤な帽子。
それは恐らく、よく見知った人。
プラシドの養父であり、全てのいろはを教えた恩人の変わり果てた姿だった。


「コナミ…?」
斜め前に立つ青年は目の前の光景が信じられずただ立ちすくむ。
返事は無い、うごく気配もない。
いつものようにむくりと無造作に起きて、いつもと同じ笑みをくれることもない。
プラシドの背筋に冷たいものが走り、嫌な予感だけがグルグルと頭を駆け巡る。

コナミは未来から現代へ連れてきたデュエルマシーン。故に『死』という概念はない。
だが、ピクリともしない姿は、機能停止を思わせ、それは機械の死と同義だった。
何より以前、彼はこちらに来る前に時空を超える際の障害電波によって記憶のメモリが悪くなっている。
なにがしかの影響で、生体メモリにまでバグが移り動けなくなっているのではないだろうか。

ぺたり、と倒れた青年の頭の前にしゃがみ込む。
その顔は普段の青白い顔よりも薄く、紙のように白かった。
全く微動だにしないコナミ。
身体中の力が霧散したように軽い存在感が、プラシドの背筋をゾクゾクと震わせるのだった。
おずおずと、帽子の上から頭を撫でる。手は優しく、常には見られない程慈しみに富んでいた。


「どうした、己れと今日は不動遊星を始末しにいくのだろう?呑気に寝ているな。」
いつもと同じ、つんけんとした言葉。
だが言葉調は平素のトゲが全て抜け落ち、何処か縋る様な音も含んでいた。
ピクリともしないコナミ。
こんなに近くに居るのに、鼓動も感じない。
前世代ロボットの彼は、人間そっくりに作られているために、血も通っているし体温もある。
だが今のコナミはひやりとして、産業用ロボットの様に冷たかった。


脳内に『死』と言う言葉が頭を何度も掠める。
たとえ壊れたとしても、直せるのならばそれは死ではない。
だが、ロボットにもパーツを換装したりするだけでは直せない致命傷というものがある。
完全なる機能の停止、メモリ、及び肉体的機能の完全破壊。
挿げ替えではどうしようもない、そうしてできたものは既に元の個体ではない。


そういった機能停止は死だ。
そして、コナミもまた、その『死』と直面しているかもしれない。
プラシドには想像もしたくない恐ろしい予測だった。


「寝坊助もいい加減にしろ!起きるのだ、コナミ…」
不安ばかりが募り、こんな風に不安を掻き立てる青年に苛立って。
ただ眠っているだけなら早く起きて安心させろ。
動けないのならエラーメッセージの一つでも出してみろ。
募った苛立ちから、拳を振り上げる。
このノータリンの頭を一殴りでもすれば、あるいは。


光のない瞳で、無情に拳を振り下ろす。
めこ、と何かのひしゃげるような音が、何もない空間に響いた。


綺麗な形を残したコナミの頭。
歪んだのは、金属製の床振り下ろしたプラシドの指だった。
新世代のマシーンの彼だが、妙なところ精密に作られているため、痛覚などはしっかりと残っている。
あらぬ方向を向いた指はオイルを垂らし、引き伸ばされた神経はじんじんと痛みを訴えていた。
そんな大変な事態になっているというのに、肝腎の養父はちっとも動かない。
それなりの強い打撃音が耳元でしたのだ、何よりもプラシドの事を大事に思う彼が目を覚まさないはずがない。


目を覚まさない。
覚まさない。
覚まさない。

痛いほどの動悸が胸を苛む。
こんな気持ち、デュエルマシーンにはいらないのに。
創造主はどうしてこんなくだらないものをつけたのだろうか。




「二度もおいていくな……ばかものが。」



圧し殺した様な声が喉元から搾り出された。
表情は今にも泣き出さんばかりにくしゃくしゃに崩れていた。



一度目は、記憶に置いていかれた。
時空を越える際に壊れたメモリは、どんなに復元しようとも叶わなかった。
幼少にデュエルや生活のいろはを教えてくれた事はおろか、プラシドの存在すら認識出来ない程に初期化されたメモリはプラシドを絶望させるにたやすかった。
それでも、仕草も性格も何も変わらないコナミの姿に、いつも後を追っては此方へと引き込む機会を伺っていた。
たとえメモリが壊れて自分が分からずとも、彼が側にいてくれればそれだけでよかった。
何も知らずとも隣で微笑ってくれればそれでよかった。


今度は、彼自身に置いていかれてしまうというのか。
もう、此方へ向かって笑いかけない。
悪い事をしても、怒らない。
こうして手を破損しても、悲しまない。
こんなに近くで叫んでも、気づかない。認識しない。
どんなに触れても、気づかない。感知しない。
どうしようも無い、ドン底の絶望感がプラシドを襲う。

そんな事実は要らない、欲しくない。
置いていかないで。
置いていかれるのはもう沢山だ、堪らない。
どうか意地悪をしないで、早くいつもの笑顔で笑んで。

崩れていない方の手で、そっと頬を撫でる。
色のない肌、温度のない頬。
それが痛いほどに、揺るがない真実を叩きつける。



置いていかれるのだ、もう一度。

今度は、永遠に。

死の概念のない機械の、『死』によって。



「プラシド」


呼ぶ声がして、青年はゆると振り返った。
その声は、涙が出そうなほど愛おしい声だった。




「プラシド、そろそろ起きてくれると嬉しいんだけど。」
さわさわ、と髪を掻き混ぜる感触に、プラシドはゆるりと目を開いた。
まだ起動しきれていないアイカメラが、ゆるりと焦点を結ぶ。
視線の先には、逆さまのコナミの顔。
心配そうな表情、何をそんなに憂いているのだろうか。

「コナ…ミ?」
手をその頬に触れる。
暖かな温もり、内側の鼓動すら感じられそうだった。
うん?と尋ねる青年。優しい顔、それは先刻求めて止まなかった色だった。

漸くに脳内CPUが本格起動を始めたプラシド。
慌てて起き上がり、青年の体を確かめる様に触る。
突然のおかしな行動に、コナミは不審そうに眉をしかめた。


「お前、体は大丈夫なのか?!」
「それは、こっちの台詞。大丈夫?さっきまで目を回していたんだよ。どこか痛いところはない?」
捲し立てる青年に対して、のんびりとした口調で尋ね返す。

白い手で、灰色の髪を撫でる。
温かい指が髪をすいていく。
先程感じた様な絶望は、そこにはなかった。
温もりだけでは信用に足りず、腕を伸ばし、いっぱいに抱きしめる。
普段抱きしめるのはコナミの役目。
いつもと逆の立場に立ち、微かに動揺した振動が青年に伝わる。
その小さな振動すら、彼が機能していると確信させてくれる一要素。
深く抱きしめると、その胸の内側から感じる熱源。コアが動いていると言う証拠。
『死』と言う概念のないロボットには、また『生』の概念もない。
だがコナミは今生きている、とプラシドは感じていた。
笑うし、変な顔もする。
抱きしめれば動くし、反発する肌も温かい。
それはすなわち生そのもので、堪らないほどに嬉しい事実だった。


コナミの胸に顔を埋めながらふふと笑うプラシド。
体をベタベタ触って怒ったかと思えば、急に抱きしめて笑い出して。
不可解な行動に、本気で心配を始める。

「やっぱり何処か打ち所悪かったんじゃないかな。思いっきり頭突きしちゃったし…。」
「何をやっているんだ貴様は。」
心配を口にするコナミに対して、これは冷静に突っ込む。
目を回していたと言っていたが、どうにも倒れていたのは自分だったようだ。
改めて体を鑑みれば、なるほど顎と後頭部が痛い。
一部始終を聞けば、出がけのコナミの目の前に出てきたらしく、立ち上がろうとした彼の頭が顎にクリティカルヒット、そのまま倒れて後頭部を強かに打ち付けたそうだ。
そのせいであんな恐ろしい夢を見ていたのだとひとりごちる。


「プラシドが急に来るから。出掛けようとする先に出て来るのは危ないと思うよ。」
頭をぽんぽんと撫でながら嗜める。
何処かに出掛ける予定だったろうに、こうしてずっと介抱してくれていたのだろう。
その優しさが嬉しい、だなんて。
内緒の内緒のないしょだ、と心の中に飲み込んだ。

「フン、…まあ今度は気をつけてやろう。」
キスをしろ、とせがむ。
生きている事を、確かめる様に。
コナミははいはい、と軽く返事をして、ゆるりとその顎をとった。
ちゅ、とリップ音をさせて唇が重なる。
この温もりを、絶対に離さない。
プラシドは腰あたりに寄せていた腕に力をいれて、更に強く、ぎゅうと強く抱きしめた。





おしまい
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